変わりゆくラオス正月の祝い方、「祈り」から「エンターテイメント」へ

ラオスの若者たちがピックアップトラックを乗り回し、荷台から通行人に水を浴びせかける(首都ビエンチャン中心部の大通り)ラオスの若者たちがピックアップトラックを乗り回し、荷台から通行人に水を浴びせかける(首都ビエンチャン中心部の大通り)

ラオスで正月の祝い方が変わってきた。「水かけ祭り」で僧侶に聖水をおごそかにかけてもらう仏教行事も今は昔。首都ビエンチャン在住のラオス人男性(30代)は「暑い中でわざわざお寺に行くよりも、家族と一緒に食べたり飲んだり、知り合いとワイワイ水をかけ合ったりして楽しく過ごす」と語る。

ビアラオで盛り上がる 

2023年のラオス正月は4月14~16日。「サバーイディー・ピーマイラオ(ラオス正月おめでとう)!」。こう叫びながら若者たちが、ビエンチャン中心部の大通りを行き交う車や通行人に容赦なくバシャッと水を浴びせかける。にわかづくりのステージの周辺には数十人の20代と思しき男女が集まり、大音量の音楽に合わせて歌う、踊る、飲む。ビールはお決まりのビアラオだ。

水かけ祭りは、もとをたどれば、東南アジアの仏教国では仏教暦の新年に旧年の汚れや苦しみを水で洗い流す宗教的行事だ。人々は仏像に聖水をかけ、自身も水を浴びることで1年を幸福で健康に過ごせると信じる。

だがラオスでは2000年代後半ぐらいから、水かけ祭りの「エンターテイメント化」が急速に進んできた。その理由として考えられるのが次の5つだ。

1つ目は、水かけ祭りのもともとの宗教的な意味合いが庶民にとって薄れてきたこと。寺へ参拝して、仏像や自分の体に聖水をかけて祈るラオス人の仏教徒は明らかに減ったという。ビエンチャンの大学で日本語を学ぶ5人の若者は「(特にご利益があるとも思わないので)今年もお寺に行かなかった。友だちと一緒に水かけや飲み食いを楽しんだ」と口をそろえる。

40代半ばの公務員の男性は「昔は家族みんなでお寺に行って、仏様に聖水をかけながら1年の安寧を祈った。だが今は、若者を中心に、食べて飲んで歌って踊って、水をかけあって騒ぐイベントになってしまった」と嘆く。

若い男女が集まり、ビアラオを飲みながら大音量の音楽に合わせて歌って踊る(ビエンチャンの大通り)

若い男女が集まり、ビアラオを飲みながら大音量の音楽に合わせて歌って踊る(ビエンチャンの大通り)

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